その他

産業医の仕事

産業医の仕事①:衛生委員会への出席と意見出し

従業員の人数が50人以上いる企業は「衛生委員会」を設置・開催する必要があります。

また、特定の業種(※下図参照)については、安全委員会も設置する必要があります。

一般的に、産業医はこの衛生委員会・安全衛生委員会への構成員として出席し、事業場に対して意見を述べます。

安全衛生委員会の開催は産業医訪問時に実施する企業が多く、1回あたりおよそ30〜40分程度で実施しています。

なお、安全・衛生委員会への産業医の出席は義務ではありませんが、構成員として出席することが望ましいとされています。

2020年からは、衛生委員会をリモート開催する企業も増えていると思われますが、必ず担当者が議事録を作成し、適切に保存する必要があります。

そして、産業医が出席できなかった場合には議事録を産業医に共有し、産業医が内容を確認できるようにしましょう。

産業医の仕事②:衛生講話

産業医が、安全衛生委員会や職場において、健康管理や衛生管理を目的に、社員に向けて研修を実施します。

これを「衛生講話」といいます。

衛生講話は、企業の希望に応じて行うもので。

頻度・開催方法などが法律に定められているものではなく、健康教育の一環として企業・組織の自発的な要望により開催されます。

まずは「衛生講話とは何か」「うちの会社に必要な講話はどのようなものか」ということを企業と産業医とで確認することが大切です。

その上で必要であれば、職場の課題に応じた衛生講話の目的や内容を考えましょう。

産業医の仕事③:職場巡視

産業医は少なくとも毎月1回(※)職場を巡視し、職場環境の確認を行います。

これを「職場巡視」をいいます。

企業によって職場巡視の内容は異なりますが、主な内容は次のものです。

  • 4S(整理、整頓、清掃、清潔の略)
  • 温熱環境(温度計、湿度計の設置、冷暖房環境、事務所衛生基準規則で定められた基準を守っているか)
  • 照度(一般事務でも最低500ルクス、通常750ルクス以上、設計業務では1500ルクス以上が推奨)
  • VDT作業(コンピュータを用いた作業)環境
  • トイレの衛生環境
  • 休養・休憩室
  • AED、消火器の場所
  • 休憩室の衛生管理ができているか(生ごみの臭いがないか、冷蔵庫の中の保存期限など)
  • 室温

また、産業医による職場巡視で問題が発見された場合には、衛生委員会等で報告し、改善を図ります。

※条件付きで2ヶ月に1回以上の職場巡視も可能です。

産業医の仕事④:健康診断結果チェックと就業判定~2020年8月より押印不要に

産業医は、健康診断の結果、異常の所見があると診断された社員について就業判定を行います。

その上で、休職等が必要と判断した従業員に対して「意見書」を作成します。

企業は「健康診断結果報告書」に産業医の押印をもらい、労働基準監督署に遅延なく提出する義務があります。

〈2020年8月〉産業医による「押印」が不要に

法令の改正によって、2020年8月中旬からは「定期健康診断結果報告書等」やストレスチェックに関する産業医の押印が不要となりました。

電子化の促進を目指した法改正ですが、各種の結果については医療のプロである産業医に確認してもらうことが、企業の健康リスク低減につながるでしょう。

産業医の仕事⑤:健康相談

健康診断後などに、従業員から健康に関する相談を希望された場合、産業医は従業員の「健康相談」を受けます。

また、ストレスチェックの高ストレス者や長時間労働面談の対象者に、健康相談という名目で面談を行うこともあります。

企業や産業医によって面談を行うまでのプロセスは様々ですが、従業員が面談を受けやすい環境を整備することで、健康に関するリスクマネジメントが行えます。

産業医の仕事⑥:休職面談

従業員から休職を希望された場合や、体調不良での欠勤、遅刻、早退が続いているなどの状況が確認された場合に、産業医は「休職面談」を行います。

休職は本人からの申し出があることが一般的であり、従業員の休職希望の申し出から休職面談を行うという流れが多いといわれています。

休職者の対応について、慣れていない担当者も多いと思います。

いざとなって慌てないよう、事前に情報収集を心掛けておきましょう。

産業医の仕事⑦:復職面談

休職していた従業員から、職場復帰の希望があった場合に、産業医はその従業員に対し「復職面談」を行います。

そして、復職面談で病状の回復程度を把握することにより、職場復帰の可否を判断します。

また、復職後の労働条件について、勤務の軽減等が必要な場合にはその旨期間を定めて就業制限を指示します。

産業医の仕事⑧:ストレスチェック実施者としての産業医

産業医は、ストレスチェックの実施者としてストレスチェックの計画・実施・終了まで全般に携わることが多いです。

その際、産業医にはストレスチェック実施者として、専門的な立場からアドバイスを行ってもらう役割もあるのです。

また、少しややこしいのですが、ストレスチェックには「実施事務従事者」という役割を持った人も携わります。

それぞれの違いや役割について、事前に確認しておきましょう。

産業医の仕事⑨:高ストレス者への面談

ストレスチェックの結果、高ストレスにより面接指導が必要であると判断された従業員がいる場合には、産業医が「高ストレス者面談」を行います。

産業医による高ストレス者面接指導により、その後の就業に関する意見をもらうことや、場合によっては休業に関するアドバイスもなされます。

産業医の仕事⑩:長時間労働者への面接指導

時間外・休日労働時間が1月当たり80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる労働者に対して、申し出があった場合、産業医は「長時間労働者面接指導」を行います。

また、時間外・休日労働時間が1月当たり100時間を超える研究開発業務従事者に対しては、申し出なしでも面接指導を行います。

面談を通じ、産業医がストレス状態やその他の心身の状況及び勤務の状況等を確認します。

それにより、社員のメンタルヘルス不調のリスクを評価し、本人に指導を行うとともに、必要に応じて企業による適切な措置につなげることができます。

また、セルフケアのアドバイスを実施し、必要に応じて専門医を紹介することもあります。

関連記事